プロジェクト
VISION
FAO(国際連合食糧農業機関)によると、世界では年間約50億トンの食品が生産されていますが実にその3分の1が廃棄され、フードロスは資源の無駄遣いのみならず環境にも悪影響を及ぼすグローバルな社会課題です。大阪大学はその解決策として、「食に関わる新技術」の社会実装と「食に関わる社会問題」に取り組む研究チームを中心に、ビジョンの策定の基となるSDGs12.3の重要課題を「フードDX」によって解決し、フードロスが削減しエシカル消費が実現する社会を目指します。
SDGsとは
国連が採択した2016年から2030年までに達成を目指す世界共通の目標 (Sustainable Development Goals)。 SDGsには17の目標があり、それらに対してより具体的な目標である169のターゲットが設定されています。
SDG12.3の課題とは
2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる目標のことをいいます。
フードDXとは
食品そのものに対するデジタルトランスフォーメーション。食品の網羅的成分分析(メタボロミクス解析)や凍結乾燥技術などの最新鋭技術と先進半導体技術に基づく、トレーサビリティ(商品がどのように作られ、流通し、販売されるかを把握すること)を融合して達成できることをいいます。
エシカル消費とは
「倫理的な」という意味。地球環境や人、社会、地域に配慮した消費をすることをいいます。
フードロスの現状と問題点、そしてわたしたちのアプローチ
フードロスには大きく5つの原因があります
フードロスの発生は、大きく 生産ロス(9%)・保管ロス(8%)・加工ロス(4%)・流通ロス(4%)そして消費ロス(8%)の5つの原因から成り立つと考えられています。
わたしたちは、各ロスの原因を追究・分析し、対策指針に議論を重ね、以下のような研究アプローチを構想しました。
生産ロスのおもな原因
生産ロスの多くは、生産物の市場価格の下落により、収穫出荷のコストが回収できず、生産地で食品が廃棄されます。また、食品の作物化が不十分であったり、規格外の作物が廃棄されています。
わたしたちのアプローチ
わたしたちは、市場価格がコストに折り合うまでの保管を担保する技術を開発します。
メタボロミクス解析
オーファンクロップ
わたしたちは、一般的に食べることのない植物資源をゲノム編集技術で作物化する開発をします。
オーファンクロップとは
ある地域においては重要な作物であるものの、近代的な育種や栽培法が確立されていないもの。ゲノム編集技術の適用により育種を短縮し、有効利用できる可能性がある。
わたしたちは、廃棄されてしまっていた作物などを利用して廃棄物ゼロミートを開発します。
フードプリンティング
フードプリンティングとは
PCなどで作成した三次元的なデジタルモデルのデータにもとづいて、三次元的なフードを印刷すること。
CO2の排出量を低減できるフードDX技術
インドネシアでの社会実装
なぜインドネシアなのか
- インドネシアは東南アジア最大の果実生産国(1900万トン)ですが、その多くは、『保管→加工→流通段階』で腐敗により廃棄されています。また、果実を含めた全体の食品廃棄量は44%、年間4800万トンであり、世界の食品ロス13億トン中3.7%を占めています。
- わたしたちは、一人当たりの食糧廃棄量が世界2位、人口2.7億人に達するインドネシアに着目し、これらフードDX技術の社会実装を行います。
- また、インドネシア政府・各大学研究機関からのバックアップ体制が整っていることも、私たちの技術革新が社会実装できる強みといえます。
社会実装とは
得られた研究成果を社会へ問題解決するために応用したり、展開することをいいます。
『食』の進化へ
わたしたちは、グローバルな本ビジョン実現に先駆的に取り組み、すべてのステークホルダー(農業生産者・保管流通業者・小売業者・消費者)が、幸せを感じ、環境にやさしく、『食の循環』で国境を越えてつながりあう社会を創造します。